セラピストにむけた情報発信


 立位姿勢制御:バランスの多様性



2008年5月29日

ヒトが直立の姿勢を保持して立つ動作には,実に多様な制御の要素が関与しています.従って,高齢者や障害者のバランス障害や転倒の問題を適切に評価し,改善するためには,個々の対象者の抱える問題が,多様な要素のどこに起因するのかを検討する必要があります.

臨床現場に長年携わるセラピストの方々にとってみれば,これは自明のことと推察されます.

一言で「バランス障害」といっても,個々の症例によってその様相は劇的に異なるため,画一的なバランスの評価法やリハビリテーション法を探る試みは,必ずしも臨床現場の問題解決には直結しないというのが,多くのセラピストの方々が持たれている印象かもしれません.


立位姿勢制御の多様性・複雑性について,セラピスト向けにわかりやすく,非常にコンパクトにまとめた英語論文を紹介いたします.

Horak,FB Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls? Age Ageing 35(Suppl 2): ii7-ii11, 2006

この論文では,立位姿勢制御を6つの要素に分けて記述し,各要素がどのような臨床事例と関わっているのかについて,わかりやすく解説しています.

この論文は本文が4ページ程度の短い論文です.立位姿勢制御の知識が豊富な方々にとっては物足りない内容かもしれません.ただ,一般の方々やリハビリの学生を対象に,わかりやすく解説する際に利用する資料としては,大変貴重です.実際,非常に膨大な知識体系をここまでコンパクトに,事例を踏まえてわかりやすく解説するのは,よほどの力量がないと難しいように思います.啓蒙論文の書き手の立場から見ても,非常に勉強になります.


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